研究課題/領域番号 |
22591139
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
竹宮 孝子 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (70297547)
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キーワード | 血管内皮細胞 / インターロイキン1β / インターロイキン1レセプター1 / 神経細胞傷害 / 誘導型PGE2合成酵素mPGES-1 / アストロサイト / EPレセプター |
研究概要 |
けいれん後の海馬神経細胞傷害におけるインターロイキン1βレセプター1(IL-1R1)を介したインターロイキン1β(IL-1β)の修飾作用を検証するために、野生型マウスとIL-1R1遺伝子欠損マウスを用いて、カイニン酸(KA)投与後の痙攣行動と海馬神経細胞脱落を比較した。 まず、野生型マウス(4匹)とIL-1R1遺伝子欠損マウス(4匹)にKA20mg/kgを腹腔内投与し、投与後4時間の痙攣行動を観察し、10分ごとに6段階に分類して評価した。続いて、別の野生型マウス(4匹)とIL-1R1遺伝子欠損マウス(4匹)にKA30mg/kgを腹腔内投与し、同様に評価を行った。KA20mg/kg、KA30mg/kgのいずれにおいても、4時間以内に全身痙攣は認められず、それ以下の行動に関しても両群に有意な差は認められなかった。KA投与後のIL-1βの産生は24時間がピークと考えられているため、数時間以内の痙攣行動に差がないことは、妥当な結果と考えられた。 次に、野生型マウス(3匹)と1L-1R1遺伝子欠損マウス(3匹)を用いて、KA2ug/2ulを海馬内に微量注入し48時間後の脳組織をニッスル染色し、海馬の残存神経細胞数から神経細胞脱落を評価した。今回、両群に有意差は認めらなかったが、個体数が少なかったことから結論を出すに至っていない。しかし、培養細胞の実験結果と合わせて検証すると、海馬神経細胞傷害にはIL-1R1を介さないIL-1βやIL-1β以外の関与も考えられたため、今後多方面からさらに検証が必要と思われる。これらの結果は、血管(そこで産生されるプロスタグランジンE2)が神経細胞傷害を制御するメカニズムとして重要な知見になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IL-1R1遺伝子欠損マウスの繁殖も順調に進み、目的に示した目的と研究実施計画に沿って研究を進められたと考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
当初から予想していた海馬神経細胞傷害におけるIL-1βの作用については、関与を示唆するデータを得ているものの、IL-1R1を介したIL-1βの作用に限定すると、メカニズムの一部に対する関与に留まる可能性が出ている。今後は、IL-1βが海馬神経細胞傷害のメカニズムにどのように関わるのかを検証した上で、IL-1R1を介したIL-1βの作用についても追究する予定である。
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