Interleukin-1 beta(IL-1b)遺伝子欠損マウス(IL-1bKO)と野生型マウス(WT)を用いて海馬の組織培養を行い、カイニン酸(KA)投与による神経細胞傷害をNeu-Nの免疫染色とpropidium iodide (PI)染色により比較したところ、WTの海馬では、コントロールに比べて、KAを投与したものはCA3領域を中心にPIの取り込みは強まり、Neu-Nの染色は弱まることが確認された。しかし、IL-1bKOの海馬では、コントロールですでにCA3領域のNeu-Nの染色はCA1領域の染色に比べ極端に弱く、またCA1領域の染色が通常以上に強まっていることがわかった。この傾向は、KAを投与した場合も変化は見られなかった。PIの取り込みはKAでやや強まる傾向を示したが、WTと比べるとその変化は小さかった。 このように、コントロールの状態で、IL-1bKOとWTの神経細胞の分布形態に変化が見られたことから、アストロサイトの分布や血管走行をGFAP、Tomato Lectinで染め分け観察した。その結果、IL-1bKOの海馬組織ではWTで見られるような構築を維持しておらず、ランダムなアストロサイトの増殖と血管構築の乱れが認められた。 mPGES-1の発現は、WTではKAを投与した場合はコントロールに比べ、Tomato Lectin染色部分で染色の増強が認められたが、IL-1bKOでは、KAを投与による増強は観察されなかった。EP3の発現は、WTではKAを投与した場合はコントロールに比べ、GFAP染色部分で染色の増強が認められたが、IL-1bKOでは、コントロール、KA投与いずれにおいても染色されなかった。 本研究結果は、IL-1bがmPGES-1とEP3の発現制御に関わる可能性を示唆したが、神経細胞、アストロサイト、血管の組織的な構造構築にも関与することが示唆された。
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