研究概要 |
これまで,小児1A型(自己免疫性)糖尿病患者430人を対象として,HLAクラスII遺伝子,クラスI遺伝子,その他の関連遺伝子SNPについて解析を行い,疾患感受性および疾患抵抗性アレルの同定を行ってきた。今年度は,SNPについての遺伝子―遺伝子相互作用,HLA遺伝子型とSNPとの関連性,遺伝子―表現型相互作用などについて解析を進めた。 1A型糖尿病との関連性の強い8 SNP:rs1131896(MICA),rs11171739(ERBB3),rs3757247(BACH2),rs231726(CTLA4),rs628224(PAX6),rs3822607(CAMK2A), rs6356(TH-INS-IGF2), rs2073610(AIRE)について,ロジスティック重回帰分析を行ったが,特に有意な遺伝子―遺伝子相互作用は見出されなかった。 HLA DRB1-DQB1疾患感受性ハプロタイプ2つのホモ(I群:DR4/4,DR9/9,DR8/8), 疾患感受性2つのヘテロ(II群: DR4/9, DR4/8, DR9/8),疾患感受性1つ(III群: DR4/X, DR9/X, DR8/X), およびその他(IV~VI群)に分類し,142 SNPのアレル頻度を各群間で比較した。rs1131896 (MICA)で有意な,またrs2776(TXN),およびrs706779(IL2RA)で有意ではないが大きな差異が認められ,これらのSNPがHLA遺伝子と何らかの相互作用を介して易罹患性に寄与している可能性が考えられた。ただし,rs1131896はHLAクラスIII領域に位置しているため連鎖不平衡についてさらに検討が必要である。 遺伝子―表現型相互作用については,rs2290400(ORMDL3-GSDMB)のリスクアレルをヘテロで有する場合,幼児期の発症リスクの増加が示唆された。
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