研究課題/領域番号 |
22591143
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
永光 信一郎 久留米大学, 医学部, 講師 (30258454)
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研究分担者 |
石橋 正敏 久留米大学, 医学部, 教授 (20168256)
岡村 尚昌 久留米大学, 高次脳疾患研究所, 助教 (00454918)
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キーワード | 思春期やせ症 / 摂食障害 / 近赤外線光トポグラフィー / 脳科学 / iomazenil SPECT |
研究概要 |
小児期の摂食障害は、頑固な拒食、食事、体型へのこだわり、肥満恐怖を呈し、不安障害や衝動性などの併存症状もしばしば認める。我々は、近赤外線光トポグラフィーなど脳科学の技術を駆使し、思春期やせ症の認知機構を脳科学の視点から「体型」や「高カロリー食」など症状関連因子の暴露より、「母子愛着課題」などで顕著に前頭前野が賦活されることを明らかにした。また、摂食障害の中核症状、不安障害、衝動性などに対する抑制系ニューロンの関与について検討した。対象は小児期発症の神経性食思不振症(制限型)15名女児(平均年齢14.4歳)。脳SPECTのトレーサーとして、ベンゾジアゼピン受容体に親和性のある[1231]Iomazenilを用いた。7名においては治療前後2回検査をおこなった。対照群は18名の成人データベース(同27歳)を用いた。神経心理尺度としてProfile of mood states(POMS)、Eatingattitude test(EAT-26),Eating disorder inventory(EDI)を用いた。本研究は久留米大学倫理委員会の承認を得ており、対象者からは同意を得た。前・後方帯状回におけるiomazenHの結合能が治療前には有意に低下していたが、治療後、同部位における活性が有意に上昇した。緊張-不安、怒り-敵意、混乱が強いほど前方帯状回における活性が有意に低下していた。以上の結果は、帯状回は意欲、記憶、動機付け、情動など認知機能を司っている。fMRIによる研究では、症状関連因子の暴露で、前方帯状回の異常活性が報告されている。本研究における同部位の抑制系ニューロンの活動性低下が、小児摂食障害患者の不安、衝動性と強い関連がある事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機能的脳画像により、今までとは異なった角度から摂食障害の病態を観察することが達成できている。また本研究に関係する論文、学会発表も多数、作成できている。
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今後の研究の推進方策 |
機能的脳画像の結果により客観性を付加するため、生化学的マーカーとの相関の検討を推進している。コルチゾールの治療前後の変動についてはすでに論文として報告をおこなった。現在、強迫性に関わるセロトニン系ニューロンの代謝産物5-HIAAの測定を共同研究で推進している。
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