研究概要 |
(1):代表的な発達障害疾患であるレット症候群(RTT:32症例)およびコントロール群(正常女性:55例)から早朝空腹時に採血して、血漿中の総グレリン(T-Ghr)濃度,活性型グレリン(O-Ghr)濃度を測定し、両者を比較検討した。また、RTT症例の血中T-Ghr濃度,O-Ghr濃度と症例の臨床症状との相関を検討した。血漿中のT-Ghr, O-Ghr濃度はコントロール群と比較して、RTTで有意に低下していた。摂食障害や便秘などの消化管運動障害を有するRTT症例では、さらに血中T-Ghr濃度が有意に低下していた。これらの解析結果について現在論文投稿中である。 (2):RTTの疾患モデル動物であるMecp2-KO Mouseでも血中T-Ghr濃度の有意な低下が確認された。さらに、脳内で高発現するグレリンのisoformであるデカン酸修飾型グレリン(C10-Ghr)の含量の低下が、Mecp2-KO Mouseの脳内で確認された。成長・発達に伴う脳内でのC10-Ghrの挙動と併せて学会発表予定(2011日本内分泌学会,2011日本小児神経学会)。 (3):母体内の発達障害である「子宮内胎児発育不全」の動物モデルを確立した(食塩食負荷妊娠Dahl-S rat)。同モデルでの胎盤内グレリン・グレリン受容体の調節異常を確認し、論文発表を済ませた。 以上、(1)~(3)の結果から、発達障害に対する血中・脳内・母体(胎盤)内でのグレリンの生理作用が確認された。今後、脳発達に対応した脳内のC10-Ghrの産生・分泌動態と、その生理作用を中心に解析を進めていく。本研究の成果は、小児の発達障害(脳を中心とした)への神経ペプチドホルモン「グレリン」を用いた、新しい治療戦略へと発展し得ると考える。
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