研究課題/領域番号 |
22591147
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研究機関 | (財)東京都医学研究機構 |
研究代表者 |
田沼 直之 (財)東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所, 研究員 (00281676)
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研究分担者 |
林 雅晴 (財)東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所, 副参事研究員 (00280777)
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キーワード | 脳炎・脳症 / 酸化ストレス / タウ蛋白 / サイトカイン / 神経保護療法 |
研究概要 |
急性・亜急性の経過をとる小児の脳炎・脳症における積極的な神経保護療法導入のために、剖検脳を用いた神経病理学的解析とELISA法による生体試料(尿、髄液)中のバイオマーカー測定、多種類サイトカイン定量を組み合わせ、脳炎・脳症の病態の系統的な解析を試みた。本年度は、脳梁膨大部に可逆性病変を呈する軽症脳炎・脳症(MERS)における髄液バイオマーカー解析を行った。髄液中のDNA酸化ストレスマーカー8-OHdG値はMERS患者群で対照と比べて有意の高値を示した。また、MERS患者6名中3名でIL-6、IL-10の軽度上昇を認め、このうち2名はMRI上脳梁膨大部以外の白質病変を認めた。以上の結果から、MERSでの白質病変の拡大に軽度のサイトカイン上昇が関連する可能性が示唆された(Brain Dev投稿中)。また、インフルエンザウイルスA/H1N1による急性脳症の1例において、経時的に髄液バイオマーカーの測定を行った。発症時には髄液タウ蛋白、炎症性サイトカインが上昇し、第9病日にはタウ蛋白の更なる上昇、炎症性サイトカインの低下傾向を認めた。臨床的にはMRI上びまん性脳浮腫、脳幹病変を呈し、ステロイドパルス療法、大量γグロブリン投与、エダラボン投与、抗脳浮腫療法に加えて、脳低温療法を行った結果、ほぼ後遺症なく治癒した。本例では抗サイトカイン療法+神経保護療法が有効であった可能性が示唆された(脳と発達)。さらに、不随意運動で発症し、FDG-PETで左側頭葉、基底核に代謝亢進を呈した1歳10ヵ月の自己免疫関連脳炎例において、γグロブリン大量療法前後の患者血清を用いて、対照脳組織での免疫組織化学染色を行った。治療前の血清ではFDG-PETの病変部位に一致して神経細胞に染色がみられたが、治療後には染色性が消失した。この結果、抗神経抗体が脳炎の病態に関与していると考えられた。(J.Pediatr)。
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