本年度の研究成果は以下の通りである。 1)LPS刺激による単核球サイトカイン産生プロフィールの検討:患者血液より分離した単核球を種々の濃度のLPSを添加培養し、炎症性サイトカインの産生パターンをELISA法で定量した結果、有症状期には末梢血単球における炎症性サイトカイン(TNFαとIL-6)の産生が対照に比べ異常に亢進していた。それに対し間欠期には逆にLPSにより誘導されるサイトカイン産生が著しく低下していた。このような現象は、MEFV遺伝子変異の有無や変異部位の違いにかかわらず、家族性地中海熱を疑われた患者で同様に認められた。 2)サイトカイン産生プロフィールとpyrin蛋白発現プロフィールの関連についての検討:異なるMEFV遺伝子変異症例患者の単核球、好中球から得たpyrin mRNA発現をコントロール群と比較した。Exon 10に変異を持つFMF症例においても他の変異群や対照群と明らかな差は認められなかった。一方サイトカインの検討では、exon 10に変異を持つ患者群では、非発作時においてもIL-18が高値を示した。これらは、治療により正常化を示した。 3)他の自己炎症性疾患におけるMEFV遺伝子変異の意義:臨床的に家族性地中海熱とは異なる炎症性疾患において、MEFV遺伝子変異を解析した。特に非遺伝性自己炎症疾患であり、患者数の多いPFAPA症候群症例16名中11名に、MEFV遺伝子にexon 10以外の特定の変異がみられた。この変異は、正常人にも一定の頻度で認められる遺伝子多型であるが、PFAPAにおけるこれらの変異の頻度は対象群に比べ有意に高頻度だった。さらに、関節リウマチや壊死性リンパ節炎と診断されている患者のなかにも特定の変異が高頻度で認められることから、これらの変異が病態修飾因子として関与していることが示唆された。
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