研究課題
A)FHLスクリーニング継続と本邦に於ける各病型の病態調査H23年度は全国から50例のFHL解析依頼があり、3例のFHL2症例を迅速に診断した。FHL3、FHL4、及びFHL5については新規症例の発見はなかった。FHLが否定された症例の中に、原発性血球貧食症候群の原因の一つとして知られる3例のX連鎖性リンパ球増殖症2型が確認され、この内2例は兄弟例であり同一の遺伝子変異を有していたが、その表現型は非常に異なる事が確認された。又、解析依頼症例全例に対してNK細胞の脱顆粒機能試験を行い、二次性の血球貪食症候群(HPS)と思われる症例の一部に一過性の機能低下を呈する症例が存在する事が判明し、この様な症例ではNK細胞数が減少している傾向がある事も明らかとなった。HPSの病態安定後に再検査したところ、何れの症例でも回復傾向が確認され、共通の病態を有する疾患亜群である可能性が示唆された。更に、解析依頼症例の一部で患者末梢血中の細胞障害性T細胞の活性化を検討したところ、急性期HPSの状態に於いてもその活性化の程度は非常に事なっている事が確認され、HPS病態の多様性が示唆された。以上の結果は、これまで混沌としていたHPSの病態を整理細分化する手掛かりと考えられ、今後のHPS病態解析に大きく寄与するものと思われる。B)FHL症例由来細胞を用いた病態解析正常人コントロール及びFHL2・FHL3症例由来のCTLラインを作成し、活性化によるapoptosisについて比較解析したが、有意な差は確認できなかった。c)FHL患者由来iPS細胞からNK細胞並びに単球/マクロファージ系細胞への分化誘導iPS作成の同意が得られなかった為、平成23年度にはFHL患者由来のiPs細胞を作成する事が出来なかった。
3: やや遅れている
FHLのスクリーニング体制を確立し、二次性HPS症例に関しても機能面から病態を整理細分化できる可能性のある知見が得られており、今後の発展が期待できる。FHL患者由来のiPS細胞が樹立出来ておらず、原発性HPSの病態解析がやや遅れている。
全国から寄せられるHPS症例に対し、FHL原因分子のスクリーニングに加えて末梢血の細胞サプセット解析やサイトカインプロファイル等の包括的スクリーニングを行い、HPS全般に関して病態解析を進める。FHLの病態解析については、既に造血幹細胞移植を受けて状態の安定している患者さんの協力を得てiPS細胞を樹立し、そこからNK細胞や単球・マクロファージ・樹状細胞を誘導して、刺激に対する反応や共培養系を用いて機能解析を進める。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Int J Hematol
巻: 94(3):285-90
DOI:10.1007/s12185-011-0916-6
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