A)家族性血球貪食症候群(FHL)スクリーニングと病態解析:全国より寄せられたFHL疑い症例に対してスクリーニングを行い、新たに5例のFHL3症例を診断した。この内3症例は乳児期早期発症の典型例であったが、残りの2例は7歳と15歳発症の晩期発症非典型例であった。遺伝子解析の結果、晩期発症例はUNC13D遺伝子にミスセンス変異を有しており、NK細胞並びにCTLの脱顆粒機能を解析した所、NK細胞の脱顆粒機能が比較的残存しているのに対し、CTLの脱顆粒機能は早期発症例と同程度に低下している事が判明した。この結果より、FHLの発症時期と残存NK細胞機能との関連が示唆された。 B)血球貪食症候群の多様性:FHLスクリーニングに寄せられたHLH症例の発症早期の臨床情報を原因別に解析した所、LDH等の溢脱酵素はFHLより二次性HLH症例に於いて高い傾向があった。白血球分画・ferritin・sIL-2Rを各病型間で比較検討した所、FHL症例では全例が(リンパ球)/(好中球)比が1以上であり、(sIL-2R)/(ferritin)比も一例を除いて1以上であった。一方、二次性HLH症例の(リンパ球)/(好中球)比は1以下である症例が多く、sIL-2Rの値に比してferritinの上昇が著しい症例が存在する事が判明し、MAS症例や新生児HSV-HLH症例にこの傾向が強いことが判明した。EBV-HLH症例や原因不明例に於いては明らかな傾向は認められなかった。以上の結果より、発症早期の白血球分画・ferritin・sIL-2R・LDHを検討する事により、病型推定が可能である事が示された。 C)患者由来iPS細胞の樹立と各血球細胞への分化誘導:iPS細胞より単球系細胞の誘導方法を確立した。又、FHL3症例由来線維芽細胞を用いてFHL3-iPSの樹立に取り掛かっている。
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