研究概要 |
食細胞異常症では多くの遺伝子異常が同定されてきているものの,遺伝子異常から発症にいたる病態の分子基盤は明らかでないものも多い。特に先天性好中球減少症では多くの患者で好中球エラスターゼ遺伝子変異が同定されるものの,好中球減少にいたる病因は明らかでない。本研究では先天性好中球減少症の病態解明を目的としてヒト化マウス作製を試みた。先天性好中球減少症患者の骨髄細胞からCD34陽性細胞を純化し,免疫不全マウス(NOD-Scidマウス)への異種間移植を施行した。移植後8週目にマウス骨随を採取し,ヒト細胞(ヒトCD45陽性細胞)の生着を確認し,先天性好中球減少症における骨随像の特徴である前骨髄球から骨髄球での成熟障害が認められるかどうかを検討した。マウス骨髄細胞の約30%がヒトCD45陽性細胞であり,そのうち骨髄顆粒系細胞が約35%を占めていた。その形態学的分類では前骨髄球は存在するものの,骨髄球の頻度は少なく,また成熟好中球もほとんど認められなかった。また,ヒトCD45陽性細胞を純化後,DNA抽出を行い,ダイレクトシークエンスを行った。先天性好中球減少患者で認められた遺伝子変異と全く同じ変異を確認することが出来た。以上の事実から,免疫不全マウス骨髄にヒト骨髄細胞が確率高く生着すると同時に,患者由来と同じ病態を反映していることが推測された。この疾患モデルが再現性よく免疫不全マウスで作製することが出来るかを他の先天性好中球減少症患者由来骨髄細胞を用いて検討を重ねているが,ヒト細胞の生着が認められたマウスにおいてはヒトと同じ骨髄像を認めることが明らかとなったので,今後は生着高率を高めてヒト細胞の解析を進める予定である。
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