顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)投与時に、好中球と血管内皮の相互作用によってインターロイキン-8(IL-8)が産生される分子機序をin vitroで解明し、次に臨床での末梢血造血幹細胞の安全で効率的な動員方法を確立することを目的としている。これまで、G-CSFで刺激した正常好中球と血管内皮細胞(HUVEC)を2日間共培養し、好中球、HUVECを分離し、それぞれからmRNAを抽出し、アレイ法(アフィメトリクス社製GeneChip[○!R]アレイ)でmRNAの発現を測定した。アレイ法のコントロールには、個別に培養した好中球とHUVECから抽出したmRNAを用いた。二つのアレイ法の結果から、発現に差のある遺伝子をリストアップした。このうち、10は好中球で、12は血管内皮でmRNAの発現が増加していることをreal time-PCRでも確認した。さらに、それぞれ5と6の遺伝子産物が、好中球とHUVECのそれぞれの細胞膜上に存在することをFACS確認した。これらの検討で、上記の遺伝子産物が、好中球と血管内皮の相互関係によってIL-8の産生に関与する可能性があることが判明した。これらの遺伝子産物が本当にIL-8産生に関与しているかどうか更に機能実験等で確認する必要があるが、もし産生に関与していることが確定すれば、それらの分子機序の調節機構を検討することによって、健常人からのG-CSFによる末梢血幹細胞採取に応用することが可能となり、非常に重要な知見となる。
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