研究課題
ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)は、未熟樹状細胞の性質を持つLCH細胞が異常に増殖し、組織破壊を起こす疾患である。病変は骨、皮膚、リンパ節、中枢神経など多岐にわたるが、溶骨性骨病変の頻度が最も高い。化学療法の進歩により予後は改善したが、肝・肺・造血器などの機能不全をきたし死亡する例が約5%、再燃する例が約50%、尿崩症などの不可逆的病変を残す例が約15%ある。よって、より有効な治療法の開発が望まれている。近年、骨免疫学の発展によって、LCHを含む炎症性骨疾患では、未熟樹状細胞が効率的に破骨細胞に分化し、組織傷害に重要な役割を果たすことがわかってきた。しかし破骨細胞への分化が促進される機序については明らかではない。そこで、破骨細胞の活性化に重要であること、LCH細胞に多量に発現していることが明らかになってきたosteopontin(OPN)に着目し研究を行った。健康成人の単球由来未熟樹状細胞をRANKL/M-CSFで刺激し破骨細胞に分化させると、培養早期から、培養細胞のOPNmRNAは上昇し、培養上清中のOPN濃度は全長型・切断型ともに著しく上昇した。破骨細胞への分化の過程でOPN受容体であるCD44およびintegrinαV、α9β1のmRNAは上昇した。また、siRNAを用いOPNの発現を阻害したところ、破骨細胞への分化が抑制された。一方、LCH患者において、血清中OPN濃度は多臓器型LCHで有意に高いこと、LCE病変部位にOPN受容体α9β1の発現していること確認された。以上よりOPNは未熟樹状細胞から破骨細胞の分化に大きな役割を果たし、かつ、LCHの病態に関連していると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
LCH且患者検体においてOPNの産生と受容体の発現が見られること、OPNが未熟樹状細胞から破骨細胞への分化において重要な役割を果たすことから、OPNがLCHの病態のKeyとなる可能性が明らかになった。
OPNには細胞質内型と分泌型、さらに分泌型には全長型と切断型がある。それらには多種のインテグリン結合モチーフが存在し、その作用は多岐にわたる。OPN阻害がLCH治療に適応できるかを検討するために、今後、OPNのどの型のどのモチーフがLCHの病態に重要なのかを明らかにする。
すべて 2011 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) 図書 (2件) 備考 (1件)
Int J Hematol
巻: 94 ページ: 545-551
巻: 94 ページ: 556-560
10.1007/s12185-011-0955-z
Pediatr Blood Cancer
巻: 56 ページ: 110-115
10.1002/pbc.22703
Virchows Arch
巻: 459 ページ: 227-234
10.1007/s00428-011-1090-1
http://www.jlsg.jp/