研究課題/領域番号 |
22591168
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
嶋田 博之 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80265868)
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研究分担者 |
吉原 宏樹 慶應義塾大学, 医学部, 共同研究員 (90348706)
嶋 晴子 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (80424167)
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キーワード | 癌 / 生体分子 / プロテオーム / リン酸化 / 白血病 |
研究概要 |
種々の病型の白血病細胞株(25種程度)およびレトロウィルス感染糸を用いてBCR-ABLを導入したマウス骨髄細胞のトリプシン消化物から、hydroxy acid-modified metal oxide chromatography (HAMMOC)法を用いてリン酸化ペプチドを濃縮し、LC-MS/MS法によりリン酸化タンパク質の同定ならびにリン酸化部位の同定を行った。その結果、BCR-ABL陽性細胞において4500以上のリン酸化部位を同定した。BCR-ABL陰性の白血病細胞株を並べて解析すると、BCR-ABL陽性細胞群から検出したリン酸化蛋白はクラスターを形成することが明らかとなり、BCR-ABLによって特異的なリン酸化シグナル伝達ネットワークが生じることが示唆された。さらに、BCR-ABL陽性細胞にチロシンキナーゼ阻害薬であるイマチニブを添加すると、(1)Ras/MAPK経路の活性化に関与するSHC1蛋白質のリン酸化が抑制されること、(2)自身の活性化を制御する転写因子ATF-2のリン酸化が抑制されることが明らかになった。 BCR-ABL陽性白血病細胞においてBCR-ABLによるリン酸化シグナル伝達ネットワークを解明し、その増殖を抑制する治療薬であるイマチニブによって生じるリン酸化シグナル伝達ネットワークの変化を解析することによって、BCR-ABL陽性白血病細胞の増殖に関わる蛋白質のリン酸化を明らかにすることができる。それらの情報を蓄積することによって、イマチニブなどBCR-ABLを標的とする治療薬に耐性になったBCR-ABL陽性白血病細胞の増殖を制御する薬剤の開発へとつながることが期待される。さらに、この実験系を用いることによって、BCR-ABL陽性白血病以外の白血病の異常リン酸化を標的とした治療薬の開発にもつながることが期待される。
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