研究概要 |
研究の目的:t(9;17)(p24;q23)を持つ難治性急性リンパ性白血病(ALL)の発がん機構を解明し,その治療開発への糸口をつかむ 1)t(9;17)(p24;q23)ALLのJAK2の融合相手遺伝子の同定:患者白血病細胞からJAK2を挟むBACクローンRP11-114N5とRP11-980L14を用いてダブルカラーFISHを行い、正常9番染色体上での2つのシグナルの融合と,der(9)t(9;17)上,der(17)t(9;17)上に各々単独シグナルを認め,この転座にJAK2遺伝子の関与を確認した.JAK2遺伝子は,B41(594-1305),SH2(1686-1956),STK(2130-2910),TK(3042-3864)の4つの領域から構成される.正常血液細胞とこの白血病細胞で,各々の領域をRT-PCRで増幅したところ,正常細胞では全てが増幅されたが,白血病細胞ではB41,SH2の領域は増幅されなかった.この白血病細胞ではSTKより上流でSH2までの間に切断点があると考えられた.これはt(9;12)(p24;p13)ALLからTEL-JAK2融合(Science,1997),t(8;9)(p22;p24)CMLからPCM1-JAK2融合(Oncogene,2005),t(9;22)(q34;q11.2)CMLからBCR-JAK2融合(Genes Chromosomes Cancer,2005),およびt(5;9)(q14.1;p24.1)ALLからSSBP2-JAK2融合(Genes Chromosomes Cancer, 2008)の報告にある切断点に類似している.予定したcDNA Bubble PCR法(Oncogene,2008)では融合相手遺伝子の同定まで至らず,現在Annealing Control Primerを利用し既知配列近傍の未知領域をPCRで増幅するDNA Walking法で同定を進めている 2)ゲノムアレイ法による解析:高密度オリゴヌクレオチドアレイ(Affymetrix社製Human Mapping 250K Sty array)を行った.白血病細胞では9p24および17q23付近のゲノムコピー数に変化はなく,9番染色体上では9p21のp16,p15領域および9p13のPAX5遺伝子領域の欠失がみられた 今後の研究実施計画:FISH法を用いたJAK2転座のスクリーニングシステムの構築と未知JAK2転座陽性白血病の抽出、新規融合遺伝子および転座相手遺伝子の細胞培養系を用いた機能解析、白血病検体を用いたマイクロアレイ解析を行いJAK/STAT経路のネットワークについて関連遺伝子を探索し分子標的治療法の可能性を探索する予定である
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