研究概要 |
ヒトボカウイルス(HBoV)は、2005年にスウェーデンの呼吸器感染症患者の鼻咽頭液から発見されたウイルスである。HBoVは、その塩基配列の系統樹分析からパルボウイルス科パルボウイルス亜科ボカウイルス属に分類される。従来、パルボウイルスB19(B19)がヒトに病原性をもつ唯一のパルボウイルスとされてきたが、HBoVの発見によってヒトに病原性をもつパルボウイルスは2種類となった。ヒトにおけるHBoV感染症の病態を明らかにすべく、HBoVに対する液性免疫に関する研究を行った。 最初に、HBoVの2種類の構造蛋白(VP1, VP2)と2種類の非構造蛋白(NP-1, NS1)を組み込んだバキュロウイルスを作成して、そのバキュロウイルスを昆虫細胞に感染させることで蛋白を発現させて、これを抗原とした間接蛍光抗体法による抗体測定系を確立した。 次に、4種類の蛋白(VP1, VP2, NP-1, NS1)に対する血清中のIgG抗体を測定すると、抗VP1-IgG抗体の検出率が最も高く、抗HBoV-IgG抗体のスクリーニングとしては、HBoV VP1を抗原とした間接蛍光抗体法を用いるのが最良と考えられた。年齢層別の抗HBoV-IgG抗体保有率をみると、6か月から8か月のIgG抗体保有率は最も低く、2~3歳では80%以上、6歳以降はほぼ100%となった。 HBoV感染症4症例の急性期及び回復期の血清中に存在する抗VP1, VP2, NP-1, NS1-IgG及びIgM抗体を測定すると、回復期血清中の抗VP1-IgG及び抗VP2-IgG抗体の検出率及び抗体価が高かった。従って、HBoV感染症の診断には急性期及び回復期の抗VP1またはVP2-IgG抗体価を測定するのが最良と考えられた。
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