急性壊死性脳症(ANE)は本邦始め東アジアで報告が多く、発症に地域的格差がある。またANEの主病態として感染後のサイトカインストームによる脳神経細胞死、多臓器障害が推測されており、感染を契機とした免疫応答に関わる免疫遺伝的背景の関与が推測される。本研究では日本人ANEの免疫遺伝学的背景を明らかにすることを目的としてHLAタイピングを行った。日本人ANE24症例(発症年齢8ヶ月-9歳7ヶ月、男児10例、女児14例)を対象とした。末梢血よりDNAを抽出。HLA クラスI(HLA-A、-B、-C)、HLA クラスII(-DQB1、-DRB1、-DPB1)のタイピングを行い、公益財団法人HLA研究所の日本人HLAデータベースと比較した。HLA解析:HLA-DQB1 *03:03のアリル頻度27.08%(p=0.042)及びHLA-DRB1 *09:01のアリル頻度27.08%(p=0.020)で有意な関連があった。さらに欧米で報告されている家族性ANE (ANE1)原因遺伝子のRANBP2の変異ホットスポット以外のすべてのエクソンの直接塩基配列解析を行い、変異が無い事を確認した。以上からANEとANE1は遺伝的拝啓の異なる疾患群であることが明らかとなった。今後サイトカイン遺伝多型など、病態から推測される候補遺伝子について解析し、ANE発症のメカニズムを明らかにしていく。
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