研究課題/領域番号 |
22591180
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
早渕 康信 徳島大学, 病院, 講師 (20403686)
|
研究分担者 |
阪田 美穂 徳島大学, 病院, 特任助教 (80532514)
|
キーワード | 血管平滑筋細胞 / イオンチャネル / 肺高血圧 / カリウムチャネル / F-actin / PKC |
研究概要 |
動脈硬化や高血圧を呈する疾患においては、血管平滑筋細胞の形質転換や遊走および増殖が病的なレベルで認められる。これらの異常を制御する因子のひとつとして、近年多くのイオンチャネルの働きの重要性が明らかになってきた。血管平滑筋細胞に存在する多種類のカリウムチャネルは血管の収縮・弛緩や分化、増殖および形質転換に深く関わっており、肺動脈においても同様な作用を有していると考えられるが、詳細に関しては報告がすくない。我々は、これまでの研究の中で、intermediate-conductance Ca2+-activated K+ channel (IKca channel)が、(1)正常血管に存在する収縮型フェノタイプの血管平滑筋細胞では発現が少なく、増殖型フェノタイプへと形質転換が認められた後、多く発現するようになること、(2)細胞内カルシウム濃度を制御するなどの作用を有し、(3)平滑筋細胞の脱分化、形質転換、遊走・増殖に深く関わっていることをPatch-clamp法などを用いて明らかにした。また、高血圧や血流による血管壁伸展の影響を検討するため、細胞膜進展刺激による培養血管平滑筋細胞のIKca channelの活性化を明らかにした。IKca channelの活性化は細胞外液中のカルシウムや、PKC、F-actinが、細胞内シグナル伝達に関与していると考えられた。研究結果を通じて、IKca channelの活性は、血管平滑筋細胞の遊走・増殖を通じて、臨床的、組織病理学的に、肺高血圧、肺血管のリモデリングの増悪に強く関与していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の達成度としては、上記にごとく順調にすすんでいると考えている。肺高血圧症の影響を明らかにするための実験方法のひとつとして、血管平滑筋細胞に伸展刺激を加えて得られるカリウムイオン電流の性質と細胞内シグナルを検討した。これらの結果は既に、Heart and Vessels誌に、Cell membrane stretch activates intermediate-conductance Ca(2+)-activated K (+) channels in arterial smooth muscle cells.とのタイトルで論文を投稿し、2011年に受理されている。今後はさらにこの実験系をすすめ、肺高血圧ラットから得られた肺動脈平滑筋細胞を使用した実験を行うように考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
我々は本研究の初期段階として、肺高血圧症の影響を明らかにするために、血管平滑筋細胞に伸展刺激を加えて得られるカリウムイオシ電流の測定を行い、intermediate-conductance Ca(2+)-activated K (+) channel (IKca channel)が同状況下で活性化されることを明らかにした。今後は、同実験系を使用して、正常および肺高血圧ラットから得られた肺動脈平滑筋細胞におけるカリウムチャネルの発現量と制御の相違に関して検討する予定としている。この相違が明白になれば、IKca channelを介しての肺高血圧症の増悪の軽減および症状悪化の抑制に非常に有用であると考えている。
|