研究概要 |
肺動脈性肺高血圧は非常に予後の悪い疾患として難病指定されている。先天性心疾患に合併する肺高血圧は肺動脈血流増加や圧負荷が、肺血管・平滑筋の伸展刺激を惹起し、血管リモデリングを促している。組織学的には血管内膜の肥厚線維化・中膜の平滑筋層肥大・叢状病変と呼ばれる複雑な像を呈する病変への進行が認められ、心疾患患児の予後に大きく影響を与えている。近年、血管平滑筋細胞の形質転換や遊走および増殖を制御する因子のひとつとして、さまざまなイオンチャネルの働きの重要性が明らかになってきた。本研究では、このような血管への伸展刺激による intermediate-conductance Ca2+-activated K+ channel (IKca channel)への作用と、IKca channelを介する血管リモデリングへの影響を明らかにして、 IKca channel阻害剤を用いた新しい治療法を開発することを目的とした。 Patch-clamp法を用いて、培養肺動脈平滑筋細胞のIKca channelへの伸展刺激の影響を検討する。Pipette陰圧や低浸透圧溶液による細胞膜伸展刺激は、IKca channelを活性化した。Caを含まない細胞外溶液やガドリニウム、GF109203Xで前処置した場合にはIKca channelの活性化が減弱しており、細胞内へのカルシウム流入やCation channel, PKCが、この活性化に関与していることがわかった。さらに、cytochalasin Dで前処置した場合にもIKca channelの活性化を抑制することから細胞内シグナル伝達にF-actinが関与していることが判明した。
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