慢性活動性EBウイルス感染症は小児に多くみられる予後不良の疾患である。これまでの慢性活動性EBウイルス感染症の病態に関する研究では、T/NK細胞の無制限増殖に働く責任EBV遺伝子の同定に主眼が置かれていた。本研究では、患慢性活動性EBウイルス感染症者において、どのような細胞側遺伝子の過剰発現あるいは発現の低下がみられるのかを解析した。 慢性活動性EBウイルス感染症患者末梢血よりリンパ球を分離し、RNAを抽出後にcDNAを合成した。遺伝子発現はPCRアレイシステムで解析した。対照として、年齢層をマッチさせた健常人の末梢血リンパ球およびEBV感染リンパ芽球様細胞を用いた。PCRアレイで得られたデータはΔΔCt法により、患者サンプルと対照コントロール群および患者間での比較解析を行った。有意差(少なくとも16倍以上)が得られた遺伝子を慢性活動性EBウイルス感染症特異的候補遺伝子とした。この解析で発現過剰として挙げられた遺伝子には、インターロイキン、Notchシグナル系、Wntシグナル系、c-fosなど癌遺伝子に関係するシグナル系、血管内皮細胞因子に関するシグナル系などに連係する遺伝子が含まれていた。また発現の低下がみられた遺伝子の一つにSH2DA遺伝子が認められた。この遺伝子はEBV感染が効率に致死的になる伴性劣性リンパ球増殖症との関係が示唆されている。今後はこれらPCRアレイで拾い上げられた発現が亢進あるいは低下している遺伝子群の再現性の確証にあたり、慢性活動性EBウイルス感染症特異的遺伝子を同定していく予定である。 一方、上記の慢性活動性EBウイルス感染症の研究と平行して、様々な病原微生物による感染症の病態解明の研究も同時に行なった。
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