研究課題/領域番号 |
22591182
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
脇口 宏 高知大学, 教育研究部・医療学系, 教授 (10116519)
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研究分担者 |
大畑 雅典 高知大学, 教育研究部・医療学系, 教授 (50263976)
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キーワード | EBウイルス / 慢性活動性EBウイルス感染症 / ウイルス学 / 感染症学 |
研究概要 |
慢性活動性EBウイルス感染症は小児に多くみられる予後不良の疾患である。従来、慢性活動性EBウイルス感染症の病態に関する研究では、T/NK(細胞の無制限増殖に働く責任EBV遺伝子の同定に主眼が置かれていた。本研究において、本年度も慢性活動性EBウイルス感染症患者で過剰発現あるいは発現の低下がみられる細胞側遺伝子の同定を行なった。 これまでに慢性活動性EBウイルス感染症患者から樹立された細胞株を用いてのEBウイルス感染細胞の遺伝子解析の報告はあるが、これらの結果は必ずしも患者in vivoでの病態を正確に反映しているとは限らない。そこで慢性活動性EBウイルス感染症患者末梢血から得られたサンプルを用いて(培養に供することなく)、本疾患に特異的に発現される細胞側遺伝子の同定を試みた。これまでの報告から慢性活動性EBウイルス感染症で特異的に発現される細胞側遺伝子の候補として29の遺伝子を取り上げ、健常人サンプルをコントロールにして、定量的リアルタイムRT-PCRにて解析した。その結果、統計学的有意差が認められた遺伝子として、過剰発現がみられた遺伝子はCDH9、RIPK2、TP73であり、発現の低下がみられた遺伝子はABCA2、CD44、CDK2、CUL5、EGR1、FCER2、FOS、NCOA3、NFE2L2、SAA2、TNFRSF10Dであった。しかし、CDH9とRIPK2を除く他の遺伝子では、伝染性単核球症やEBウイルス関連血球貧食リンパ組織球症でも同様に遺伝子の発現に有意差が認められた。 以上の結果より、CDH9とRIPK2は慢性活動性EBウイルス感染症で特異的に過剰発現される遺伝子であることが示唆された。RIPK2遺伝子はアポトーシスやオートファージに関与する遺伝子であり、この遺伝子を標的にした、慢性活動性EBウイルス感染症に対する新規治療法の展開に繋がる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において、これまでに慢性活動性EBウイルス感染症で特異的に発現する遺伝子群を、cDNA PCRアレイおよび定量的リアルタイムPCRで同定する段階まで達成している。
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今後の研究の推進方策 |
慢性活動性EBウイルス感染症患者数は少なく、大規模な研究を進めていくことに限界はあるが、本研究課題において現段階までに同定することができた本疾患特異的に発現する遺伝子が病態形成にどのように関与しているのかについて研究を推進していく。また本研究を推進していく過程で、伝染性単核球症やEBウイルス関連血球貧食リンパ組織球症の病態解明にも繋がる研究を予定している。
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