研究課題
慢性活動性EBウイルス感染症は小児に多くみられる予後不良の疾患である。これまでの慢性活動性EBウイルス感染症の研究では、疾患特異的細胞側遺伝子の解析データは十分に蓄積されているとは言えない。しかも従来の研究は細胞株を使ってのデータが多く、患者in vivoでの病態を正確に反映しているとは限らない。本年度も生体内に近い状態にある細胞側の遺伝子発現を解析し、慢性活動性EBウイルス感染症特異的に発現変化する遺伝子の同定を行なった。慢性活動性EBウイルス感染症患者末梢血よりリンパ球を分離し、培養に供することなくRNAを抽出し、cDNAを合成した。遺伝子発現のプロファイリングはPCRアレイシステム(RT2 Profiler PCR Array :SuperArray Biosciences)を用いて解析した。健常人末梢血リンパ球をコントロールとして、調べた慢性活動性EBウイルス感染症全例に共通して発現亢進している細胞側候補遺伝子群を同定した。その中で、IL10とTNFα遺伝子に着目した。コントロールに比してIL10は25倍、TNFαは9倍発現亢進していた。ELISAによる測定でもIL10、TNFαは健常人に比べ優位に増加していた。IL10やTNFαの発現を正に制御するシグナル伝達系のp38 MAPK分子の発現亢進も認められた。p38 MAPKシグナル伝達系によりIL10の産生が亢進し、リンパ球の増殖が促され、さらにTNFαの産生亢進によりマクロファージが活性化し慢性活動性EBウイルス感染症でも認められる血球貪食を引き起こすことが推測された。IL10およびTNFαを標的にした慢性活動性EBウイルス感染症に対する新規治療法の展開に繋がる可能性が示唆された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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