川崎病における血管炎症メカニズムについてin vitro研究としては、単球細胞株U937-脂肪細胞(3T3)の共培養及び臍帯内皮細胞‐単球の共培養をおこなった。それにより何れの共培養においても単球の活性化が惹起されることが観察された。この結果はこれまでの報告にもあるように、細胞同士の接触が、単球の活性化委に重要であることを示している。他方、通常の単独培養では各種刺激物質(LPS・IFN-γ等)で容易に単球細胞の活性化が得られたに対して、共培養系ではその時点で既に活性化状態になっているため各種刺激による大きな変化を検出できなかった。 仮想外膜として当初3T3細胞株を使用していたが、マウス由来であり本来の脂肪細胞とは性質を異にすることが考えられたため、ヒト脂肪前駆細胞を導入し、それについては脂肪細胞への分化誘導を確認した。この結果、3T3よりもよりin vivoに近い状況を再現できるようになった。しかし、この細胞においてU-937および末梢血単球の共培養で、単球の活性化が共培養の時点で強く促進される状態であった。 以上の結果から、単球を刺激しない状態かつ細胞同士の接触・情報交換ができる共培養系の確立が研究遂行に必要であることが明らかになった。 培養実験と並行して川崎病における炎症の機序解明のために、患者急性期の血清におけるSAA(血清アミロイドA)の測定検討を開始した。細菌感染症との比較検討では川崎病において有意にSAAは高値を示し、従来の炎症マーカー病勢をより鋭敏に反映して変化することを明らかにした
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