研究概要 |
血管障害や動脈硬化の発症には、炎症と酸化ストレスが trigger となり、血管内皮機能障害を中心とした病態から硬化性病変を形成していくことが明らかとなってきた。また、この血管内皮機能障害は、種々のサイトカイン産生や血小板活性化を惹起し、さらに病態が進展していく流れも示されてきた。本研究では、川崎病において、血管障害および動脈硬化性変化の発現にとって主要な危険因子といえる炎症、酸化ストレスおよび血小板活性化の存在とその臨床的意義について臨床的な面から検討した。炎症性マーカーとして高感度 CRP、IL-1, 2, 6、TNF-αを、酸化ストレスの評価には活性酸素種生成系マーカーとして血中ヒドロペルオキシド (ROM)、消去系マーカーとして血中還元力 (BAP) を、血小板活性化マーカーには、血小板由来マイクロ-パーティクル (PDMP) を用いた。 川崎病急性期において、治療奏功例ではIVIG により ROM および炎症性マーカーは速やかに低下した。一方 IVIG 不応例において治療前のBAPは健常児および奏功例に比し有意に低値であり、治療後もROMの低下は緩慢であった。また IL-1, 2, TNF-αも高値が続いていた。さらに、PDMP は6か月以上にわたり持続していた。この長期にわたる血小板活性化は、川崎病における血管障害と硬化性変化への進展に関与していることが示唆され、抗血小板療法の臨床的意義が初めて示された。 本研究により、酸化ストレスおよび血小板活性化の評価は、川崎病の病態把握に非常に有用であり、臨床的意義を有することが示された。またBAP は IVIG不応の予測あるいは早期発見、また急性期治療の効果判定に有用である可能性が示唆された。
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