研究課題
本研究は、小児特発性ネフローゼ症候群の疾患活動性の評価、予後、薬剤反応性の予測等を可能とするバイオマーカーの確立と病態の解明を目的とする。一昨年度は、12名の患者で本症の初発時と寛解時に、TおよびBリンパ球上の各種共刺激分子の発現を調べた。その結果、治療開始前の初発時では、CD4陽性Tリンパ球上のCD40Lの発現率は34.4%であったが、ステロイド薬使用下の寛解時は13.3%に有意に減少した(P<0.05)。さらに、CD40については、治療開始前の初発時では、CD19陽性B細胞状上のCD40の発現率は93.9%であったが、ステロイド薬使用下の寛解時は79.0%に有意に減少した(P<0.05)。昨年度は、この12名の患者の臨床経過を追跡調査し、これらのマーカーが頻回再発やステロイド依存性などの難治化・重症化を予測しうる指標となるかを検討した。しかし、結果としてこれらの指標の多寡による難治化・重症化の予測はできなかった。しかし、CD40LやCD40が本症の疾患活動性や病態に関与することはこれまでに報告はなく、本症の病態の解明に新たな示唆を与えるものである。さらに昨年度は、リンパ球上の共刺激分子である可溶性CD30(sCD30)のバイオマーカーとしての有用性を検証した。その結果、血漿中sCD30はネフローゼ症候群の初発時およびステロイド投与後の寛解時は(n=13)、それぞれ70.1±27ng/ml、27.1±19.9ng/ml(P=0.0004)であり明らかな有意差を認めた。また、正常コントロール(n=20)とステロイド非使用の寛解中のネフローゼ症候群(n=17)では、25.9±10.9ng/ml 25.6±11.9ng/ml、であり,それぞれネフローゼ初発時と有意差を認め(P=0.00025,P=0.00026)、sCD30が本症の疾患活動期にのみ上昇することが判明した。この発見はこれまで報告のないものであり、CD40分子同様に、TおよびBリンパ球の相互活性化が本症の病態に関与する事実を示すものである。本年度はBリンパ球のCD40の下流のシグナルの活性化を、Western blot、RT-PCRで検討する。また、可溶性CD30についても、予後の予測が可能となるバイオマーカーかどうかの検証を行う。
2: おおむね順調に進展している
小児特発性ネフローゼ症候群の疾患活動性を反映する分子をこれまでに3つ(B細胞上のCD40、T細胞上のCD40ligand、血漿中の可溶性CD30)を発見した。これらは従来の報告にない新たな発見である。今後、これらのマーカーの下流のシグナル伝達の解明を進める。
1)可溶性CD30分子についても、頻回再発やステロイド依存性ネフローゼ症候群などの難治化・重症化を予測しうる指標となるかを、患者の経過を前方視的に観察し検討する。2)末梢血単核球におけるCD40の下流のシグナルの活性化を、Western blotにより検討し、本症におけるB細胞の活性化の機序について解明することを試みているが、現在条件設定と適切な抗体の選択を行っている段階である。3)昨年、数名の初発患者で末梢血単核球を用いたマイクロアレーの解析を行ったところ、本症の急性期にインターフェロン関連の遺伝子発現が上昇している患者を数名認めた。本事象が一般的な事象であるかを症例を重ね検討する。さらに急性期患者血清を培養細胞に添加しインターフェロン関連分子の発現やその遺伝子の発現が増強するかを検討する。本症においてインターフェロンの検討を行った報告は少ないため、本症の疾患機序の一端の解明につながる可能性がある。
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