研究課題
昨年度までの研究により、健常人と比較してネフローゼ症候群の患者では、B細胞上のCD40とT細胞上のCD40 ligand(CD40L)の発現増強が明らかとなった。また、治療後はこれら分子の発現は健常人レベルに減少することが明らかとなった。CD40シグナルは①B細胞の活性化 ②クラススイッチ ③体細胞突然変異などに関わる重要なシグナルである。一方、B細胞上に異所性CD40Lを発現させたトランスジェニックマウスでは、過剰なCD40シグナルにより自己免疫疾患様の病態を発症するため、過剰シグナルは免疫異常をもたらすとされる。本症の患者ではCD40、CD40Lの強発現に伴い、CD40/CD40Lの相互作用が増加し、その結果、細胞内シグナル過剰の状態が想定された。また、過剰なCD40シグナルによるB細胞の活性化や過剰なCD40LシグナルによるT細胞の活性化が病態発現に影響していると予想された。今年度は発現増強に伴う実際のシグナル増強を検討した。CD40シグナルの増加はCD40シグナル下流に存在するJNKのリン酸化(p-JNK)を増加させる。そこで本症患者の末梢血からPBMCを分離し、治療前と治療後のp-JNKの発現レベルをウエスタンブロット法にて検討した。その結果、治療後と比較して治療前の患者検体ではp-JNKの発現は強く、治療後は健常人と同レベルの発現に戻っていることが示された。これにより、本症患者ではB細胞上のCD40とT細胞上のCD40Lの発現増強に伴ったCD40/CD40Lの相互作用とシグナルの増強が起きている事が示され、一連の事象が病態に重要な役割を果たしていると考えられた。今後、異常CD40シグナルとネフローゼ症候群の直接的な関連について分子生物学的手法を用いて解明する予定である。本研究の結果は、本症の病態の解明と新規治療法の開発に有用な知見となった。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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