研究概要 |
【学術研究の実施内容と学術研究業務遂行経過】低酸素性虚血性脳症(Hypoxic-ischemic encephalopathy ; HIE)は脳性麻痺(cerebral palsy : CP)の原因の一つであり、その発症のメカニズムを解明することは、発症予防と治療に向けた戦略を構築する上で、周産潮領域にお付る大きなテーマである。その発症にはグリア細胞の一種であるオリゴデンドロサイト(Oligodendrocyte ; OL)が深く関与していることが知られている。本研究では、OL前駆細胞(Oligodendrocyte precursor cells ; OPC)増殖過種における新規シグナル伝達経路の詳編な解析を行うことにより分子レベルにおけるHIE発症の仕組みを解明し、同時に、ラットのHIEモデルと脳室周囲白質軟化症(Periventricular leukomalacia ; PVL)モデルを用いた実験により、有効な子防葉・治療開発への足がかりとすることを目的とする。 【研究成果の内容】近年、硫酸マグネシウム(MgSO4)の母体投与が早産児のCPやPVLに対して予防効果を持つ可能性が示されている。そこでPVL動物モデルを作襲し、さらにMgSO4投与によるPVL発生防止が可能か否か、PVLに特徴的なOL傷害を指標として検討した。その結果、コントロール群に比べMgSO4投与群では、患側脳梁のミエリン蛋白(MBP)発現量は回復し、炎症や虚血性変化の指標となる反応ミクログリアの数も有意に減少した。さらに、MBPに先駆けて発現するOlig2,MAGといったオリゴ前駆蛋白の発現量もMBPと同様に回復しており、オリゴデンドロサイトの分化初潮の段階においてMgSO4が低酸素虚血負荷に対し保護的に作用することが示唆された。
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