研究課題/領域番号 |
22591198
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
亀井 良政 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (00251265)
|
キーワード | 低酸素性虚性脳症 / 脳室周囲白質軟化症 / オリゴデンドロサイト / 興奮毒性 / マグネシウム |
研究概要 |
本年度は、我々が独自に開発し改良を重ねて確率したPVLラット動物モデルを用いて、硫酸マグネシウム(MgSO_4)の投与がPVL発症の予防効果を有するか否かを検討した。に対して予防効果を持つ可能性が示されている。そこでPVL動物モデルを作製し、さらにMgSO_4投与によるPVL発生防止が可能か否か、PVLに特徴的オリゴデンドロサイト(Oligodendrocute; OL)傷害を指標として検討した。6日齢の新生仔ラットを用いて、エーテル麻酔下にて片側頸動脈の結紮を行い、術後1~2時間の休職の後に、37℃、6%酸素化で60分の低酸素負荷を低酸素用チャンバーにて加え、MgSO_4の脳保護効果を観察するために、低酸素負荷の30分前に、MgSO_4を新生仔の腹腔内に投与した。 その結果、無治療群では結紮側の脳室周囲白室でOLに特異的に発現するミエリン蛋白(MBP)のタンパク発現量が減少するのに対して、MgSO_4投与群では、これらタンパクの発現量は回復していた。さらに、炎症や虚血性変化の指標となる反応ミクログリアの数も有意に減少した。さらに、MBPに先駆けて発現するOlig2,MAGといったオリゴ前駆蛋白の発現量もMBPと同様に回復しており、オリゴデンドロサイトの分化初期の段階において、MgSO_4が低酸素虚血負荷に対し保護的に作用することが示唆された。さらに、これら病変部ではTUNEL陽性細胞がMgSO_4投与により減少することを明らかとし、MgSO_4の脳保護効果がOLのアポトーシス抑制により発現していることが示唆された。 また新たに、PVL動物モデルを用いて脳低温療法の有効性を確認することができ、さらに低温療法による脳保護効果がやはりオリゴデンドロサイト前駆細胞(oligodendrocyte precursor cells; OPC)のアポトーシス抑制によるものであることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画(1)、(2)ラットHIEモデルを用いた硫酸マグネシウムの脳保護効果について、特にPVLモデルに対する脳保護効果についても、in vivo,in vitro両方で確認でき、現在論文投稿中である。 研究計画(3)OPCの低温条件下での増殖メカニズムについて、data miningによりいくつかの候補遺伝子を発見し、新たに作成したPVLに対する脳低温療法動物モデルを用いてその検証を開始している。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、早産児のPVLI動物モデルが確立し、さらに脳低温療法がPVL発症の予防にも有効であることが判明した。ただし、早産児ではその未熟性ゆえに脳低温療法の応用が困難と言われている。従って、2010年に発見報告した低温条件下でのoligodendrocyteの細胞増殖メカニズムをさらに検討し、microarrayのデータを参考に脳低温療法に変わる新たな薬物治療の可能性を追求したい。
|