研究概要 |
ヒト器官形成期に発生する先天異常の解明のために、京都大学大学院医学研究科附属先天異常標本解析センターが保持している器官形成期のヒト胚子を用いて撮像したMR断層画像1200例を用いて、以下の手順でデータの加工、解析を進めた。MR画像データは1個体あたり256x256x512(voxel)の直方体の情報があるが、ソフトウエアImage Jを用いてMR画像データを適切に切断し抽出した。ソフトウエアOsiriXを用いて2種類のレンダリング手法(VR,MIP)を用いて三次元胚子像をコンピューター上に作製した。この胚子像はQuick Time-virtual reality(QT-VR)法を用いて作製、保存され、コンピューター上で胚子を1600方向から立体的に観察できるようになっている。VR像は、おもに体表観察に、MIP像は内蔵諸器官の把握に有用である。カーネギーステージで評価項目として使用されている外観、上下肢、感覚器の形態をVR像を用いて観察し、身体部位ごとに発生の進み具合を評価し、その差異をとらえ、各胚子の個体差を表現した。こうして得られたコンピューター画面上の胚子は、詳細な観察に耐えうる画質であることが分かった。対象症例について、外表写真の撮影を開始した。これはプロジェクト終了時にデータベースを公開することを目的としている。主要器官として、肝臓、脳神経管、脳室を選択しての発生段階の定量、可視化を行った。肝臓の発生及び周辺器官との関係を詳細に表すことができた。脳室では、幾何学的図形への近似を行い、形態学的な変化を抽象化した。これらのデータは、妊娠初期の胎児診断における重要な基礎的データとなると考えられる。また、解剖学的位置が立体座標で示せるというMRdataの特性を生かし、発生時の主要器官の形態形成と造形運動の数値化を試みた。内耳、外耳の動き、顔面形成、胃、消化管の下降、回転についてその動きを解析した。
|