神経管閉鎖障害(NTDs)の発症メカニズムを明らかにするため、環境因子に対する感受性が高く高頻度にNTDsを発症するPdn/Pdnマウス胚仔を用いて、前神経孔閉鎖期の胎生9日から、完全に閉鎖完了する時期までの遺伝子の発現変化していく過程を網羅的に分析し、環境因子とNTDs発症との関連を検討することを目的とした。22年度は胎生9日胚の分析を行った。ヘテロ型であるPdn/+マウスどうしを交配し、妊娠7.5日の母獣に、食品のカビ毒の一種でNTDを誘引するオクラトキシンA(OTA)を腹腔投与した。胎生9日胚の頭部を摘出し、RNAを抽出した。同時に卵黄嚢膜を用いて、PCR法による遺伝子型、性別の判定を行った。OTA無処理群も同様にRNAの抽出と遺伝子型および性別の判定を行い対照群とした。各群のサンプルをCy3標識し、44Kの遺伝子プローブが搭載されたスライドグラスにハイブリダイズした。得られたシグナルのスポット解析および数値化を行った。また各群の発現の状況を相互比較するために正規化してデータ解析を行った。+/+型の雄・雌、Pdn/Pdn型の雄・雌すべての群で、OTA曝露により、発現量が2倍以上増加した遺伝子は204個で、1/2以下に減少した遺伝子は98個であった。これらの遺伝子のKEGG解析をしたところ、Metabolic pathways、Chemokine signaling pathway、Cytokine-cytokine receptor interactionが主なキーワードであることがわかった。さらにリアルタイムPCR法を用いて複数の遺伝子における発現量の測定を行い、マイクロアレイの結果と比較して詳細な検討を行なっている。
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