環境要因の一つであるオクラトキシンA(OTA)に対する感受性が高く、高頻度に神経管閉鎖障害(NTDs)を発症するPdnマウスの早期胚を用いて、前神経孔閉鎖期の遺伝子の発現変動を分析し、NTDsの原因となる遺伝子を探索した。これまでに、妊娠7.5日にオクラトキシンA(OTA)に曝露した群とOTA無処理群の胎生9日胚の頭部よりRNAを抽出し、DNAマイクロアレイ解析でスクリーニングを行い、リアルタイムPCR法で発現量の確認を行った。 24年度は、9日胚で発現変化が認められたGli3関連遺伝子、脳で発現が認められる遺伝子、転写調節因子などが、神経管閉鎖の過程でOTA曝露によりどのように発現変化しているのかを9および10日胚頭部より抽出したRNAを用いてリアルタイムPCR法で測定した。Wnt8b、Wnt7b、Emx2等Gli3の下流で働くとみられる遺伝子では、Pdn/PdnでのOTA曝露の影響は少ないと考えられた。 また、9日胚でOTA曝露により発現量が2倍以上増加した遺伝子のうち、脳で発現しているBarx1、Tbx1、Tlx1発現の局在性をホールマウントin situ ハイブリダイゼーション法により確認した。いずれの遺伝子でもOTA曝露群で発現の増加が認められた。 今後さらに詳細な検討が必要だが、Pdn/PdnマウスにおけるOTA曝露による神経管障害は転写調節因子を含めた複数の遺伝子が複合的な相互作用で発症している可能性が示唆された。
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