研究概要 |
本研究の課題は早産児、正期産児の嗅覚、味覚の大脳皮質レベルの発達的機能変化を検討することである。方法:ベットサイドで多チャンネル近赤外光イメージング(日立製作所社製)を使用し、早産児及び正期産新生児の前額部にプローベを置いて脳血流の変化を測定した。対象は脳障害を認めない生後3日目~生後2か月の正期産新生児と満期前後に達した早産児とし、保護者に同意を得て行った。刺激は、母乳、他人の母乳、ミルクを用いた。今年度は、生後早期より経時的に測定をすることが可能であった母乳栄養の正期産児症例を加えて統計的検討を行った。また、早産児との比較を統計的に検討・考察した。結果及び考察:正期産児症例においては他人の母乳刺激では生後日齢と反応潜時の間に負の相関 (r=-0.615, p<0.05) を認め、日齢が経つにつれて反応潜時が短くなった。これに対し、自分の母親の母乳刺激では生後日齢と反応潜時の間に正の相関 (r=0.723, p<0.05) を認めた。この関係は早産児には認められないものであり興味深いものであると考える。早産児ではミルクの刺激において生後日齢と反応潜時の間に負の相関 (r=-0.738, p<0.05) を認めた。また、正期産児と満期にほぼ達した早産児で、修正週数をそろえた反応潜時の比較では、母乳、他人の母乳、ミルクすべてにおいて有意差を認めなかった。今後症例を増やし検討する必要があるが、臭いの種類によってはその反応的発達は異なっている可能性が考えられた。今後薬剤の臭いに対する反応などについても検討する必要があると考える。味覚の研究については、今後研究方法をさらに検討する必要があった。
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