研究課題
1)近年、脳発達時期におけるグリア細胞の機能的変化が、成長後の様々な脳機能の深く関与する旨の報告がなされた。そこで我々は、母仔分離した動物の海馬におけるグリア細胞特にastrocyteの動態変化に着目して、astrocyteのマーカーGFAPとその栄養因子S100βの発現量の変化ついて経時的に解析した。Wistarラットを用い、母仔分離は、2-21日齢(PND)、6時間/日行った。海馬GFAPは、PND7において、mRNA、蛋白質レベルいずれでも低下していた。同様にGFAPから産生されるS100βも低下していた。しかしながらそれ以降の日齢(PND14, 21, 50)においては有意な変化を認めなかった。この結果は、神経細胞の支持組織としてのグリア細胞が母仔分離により影響をうけ、間接的に神経発達に影響を及ぼすことが示唆される。2)昨年度の報告における脂肪組織におけるエネルギー代謝関連因子の変動に関して―昨年度のデーターは暫定的データーであったが、今年度は個体数(n)を増やして、再解析を行った結果、母子分離された動物における白色脂肪では、prohibitin (PHB)の発現量が増加していた。一方、褐色脂肪においては、uncoupling protein-1 (UCP-1) の発現量に変化を認めなかったが、アドレナリンβ3(AD-β3)受容体の発現量は有意に減少していた。UCP-1はAD-β3にリガンドであるアドレナリンが結合することで生理作用を発現することを鑑みると、AD-β3の減少はUCP-1の作用の減弱を意味する。以上の結果は、白色脂肪の増殖と褐色脂肪の機能減弱を示唆することから、脳発達時期における母仔分離ストレスにより、エネルギー代謝関連タンパク質に変化を生じ、脂肪のエネルギー蓄積-脂肪増殖に向かうことが予想され、これは将来の肥満を意味するものである。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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