研究概要 |
集中治療を必要とする未熟児新生児における循環管理の適切な指標はない.我々はレーザードップラー血流計による皮膚血流量の測定とパルスオキシメーターの光プレティスモグラフィー波形解析を併用することにより,リアルタイムに循環動態を評価できる非侵襲的モニターの開発を進める. 【1】レーザードップラー血流計による血流量測定方法の標準化の徹底 前年度から引き続き,安定したデータが得られるプローブの貼付位置を模索した結果,前額部と下腿前面の2ヶ所が最も安定したデータが得られることが判明した.サンプリングレートは100/sとして安静状態を含む20分間以上のデータを収集していった.マシモジャパンのラディカルSETというパルスオキシメーター後面のアナログ出力端子から,プレティスモグラフィー波形を電圧変化として取り出すためのケーブルを作成し,それによって皮膚レーザードップラー血流量とパルスオキシメーターのプレティスモグラフィー波形を同時にデータ収集できるようになった. 【2】心電図波形の同時測定 当院NICUのPhilips社製ECGモニターのアナログ出力端子から出力されるECG波形も同時にデータ収集した.これによって末梢循環と中枢心機能との関連性を解析することができる.これを研究費で購入したAD INSTRUMENTSのHeart Rate Variabilityモジュールを利用して心拍変動の周波数解析をも進めているところである. 【3】循環動態安定群の選定とデータ収集 在胎36週以上,コットで体温が安定している,哺乳・活気良好,血圧安定,酸素不要,血液ガスデータ(pH,pCO2,BE,Na,Ca,Glucose,Lactate)に問題のない児を「循環動態安定」と考えて,そのcriteriaを満たす児のデータ収集を行った(現在のところ10例のデータ収集が済んでいる).今後はそれらの解析データを基礎値と考えて,それと比べて循環動態が不安定な児のデータの性質を見極めていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
体動が多い児は安定したデータ収集が非常に困難であり,その対策に苦慮している.また,脈波の成分の解析も困難であったため,予算の範囲内で心拍変動解析のアプリケーションを購入し,現在それを利用して解析を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
当初はパルスオキシメーターのプレティスモグラフィー波形解析を主目的のひとつと考えていたが,その波形は当該部位のヘモグロビンの量を直接反映しているものではなく,機械内部で誇張表現された波形であることが判明してきたため,今後はレーザードップラーによる皮膚血流の波形解析と心拍変動解析をメインに末梢循環の新しい評価方法を確立していく方針である.
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