研究課題
カロリー制限は多くの生物において寿命を延長させることが知られており、臨床においても生活習慣病の予防・改善効果が報告されている。しかし、胎児期における低栄養環境は出生時の子の体重を低下させ、その後、生活習慣病のリスクを高めることが疫学研究で明らかにされ成人期疾患胎児期起源説が提唱されている。この説を検証する数多くの動物実験が報告され、胎児期低栄養環境がインスリン抵抗性、高血圧、肥満の誘発等に加え、寿命の短縮が報告されている。我々は、カロリー制限の成人および胎児に対する効果が全く逆であることに注目し、実験を行った。マウスの妊娠10~17日に50%の給餌制限を行い、妊娠18日の胎児および母動物の肝臓を摘出し、mRNAの抽出を行った後、アジレント社のマウスホールゲノム4x44kチップを用いDNAマイクロアレイ解析を行った。母動物および胎児の間で逆方向に発現が変化する遺伝子を中心に検索を行った。母動物の肝臓では、2500のup、3000個のdown、胎児では2000個のupおよびdownする遺伝子が検出された。さらに、母動物と胎児で逆方向に変化する約200個の遺伝子を見出すことができた。この中には既に臨床研究で心筋梗塞との関連が明らかとなったtrib1、リンパ球の分化に重要なrag1、さらにヒストンタンパク等が含まれていた。また、胎児肝臓で変化した遺伝子のカテゴリー解析から、胎児期低栄養環境は免疫系の発達に影響を及ぼすことが明らかとなった。さらに、給餌制限を行った動物を自然分娩させ、生後1週および離乳時の組織の採取を試みているが、保育忌避あるいは食刹例が出現した。給餌制限を50%から30%に変更することにより保育状況の改善がみられるか検討を進めている。
2: おおむね順調に進展している
50%給餌制限を行った胎児肝臓のDNAマイクロアレイ解析を予定通りに実施した。タンパクの解析も実施しているが、アセチル化抗体を用いた免疫沈降法を用いた解析を追加して実施している。
現在、生後観察群のサンプリングを行っているが、50%給餌制限では保育忌避・食刹例が多発するため、30%給餌制限に変更を計画している。また、生後観察群の解析が遅れる可能性があるので、胎児組織でDNAメチル化の網羅的解析法の検討を進める。
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