本研究の目的は、現在まで根本的治療法がない表皮水庖症に対し、臨床応用可能な遺伝子治療を開発することである。本研究グループが有する、表皮水疱症患者に極めて類似した表現型を呈するモデルマウス(17型コラーゲン(COL17)ノックアウトマウス)を使用し、遺伝子導入効率が高いと期待されるレンチウイルスベクターを用いた遺伝子導入を試みる。その際、水疱内へ直接、COL17発現レンチウイルスを導入する点が特徴である。平成22年度は、正常ヒトCOL17cDNAをレンチウイルス発現ベクターpCDH-CMV(SBI)へ組み込み、偽ウイルス粒子発現パッケージングプラスミド(VSVG、GAG、REV)とともに293TN細胞へ遺伝子導入することで、COL17遺伝子発現ウイルスを作製した。ウイルス粒子をCOL17ノックアウトマウス培養表皮細胞に導入したところ、蛍光抗体間接法およびウエスタンブロット法により、ヒトCOL17の発現が確認できた。In vivoでの治療では、高い力値を持つウイルスが不可欠であるため、超遠心を用いた偽ウイルス粒子の濃縮を試みたところ、濃縮後の遺伝子導入効率の向上が確認された。一方、導入遺伝子を効率的に発現する適切なプロモーター選択も重要である。そのため、通常のレンチウイルス発現ベクターに存在するCMVプロモーターをchicken β actinプロモーターあるいはK14プロモーター(表皮基底細胞の部位特異的発現プロモーター)へ置換したコンストラクトを作成した。平成23年度以降は、異なるプロモーター下でCOL17 cDNA、GFP、LacZを発現するウイルス粒子を作製し、COL17ノックアウトマウス培養表皮細胞ならびにHeLa細胞へ導入することで、in vivoでの遺伝子導入に向けた最も効率的なプロモーターを明らかにする予定である。
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