本研究において計画した、水疱を利用した表皮水疱症の新規遺伝子治療の開発では、17型コラーゲンが欠損した表皮水疱症モデルマウスを利用した実験を行った。このマウスでは、用手的に皮膚を擦過すると、皮膚の水疱が容易に誘発される。モデルマウスに人工的に誘発した皮膚の水疱内に、レンチウイルスを用いてGFP遺伝子を強制発現させたところ、少量ながら表皮細胞に導入されたGFPの発現を認めることができた。この過程でさまざまなウイルスの濃縮を試みて、最も濃度が高いものでも、生体内に投与するとごく少量のGFPが見られるのみだった。これに加えて、表皮水疱症における欠損遺伝子(17型コラーゲン)のcDNAの投与を行ったが、期待されたような欠損遺伝子の発現は蛋白レベル(蛍光抗体法による染色、ウェスタンブロット法)で認められなかった。今後の方針としては、遺伝子の導入効率を上げるような技術的進歩が必要となると考える。 これとは別に、細胞治療としてGFP発現表皮細胞を表皮水疱症モデルマウス(17型コラーゲン欠損マウス)の水疱内に投与した。これはGFP強制発現トランスジェニックマウス表皮から培養した、培養表皮細胞を用いたものである。このGFP発現培養表皮細胞を水疱内に投与すると、投与後数日の間は細胞が投与部に留まって、GFPの発現を保っていた。今後は、これらの細胞が長期間投与部で機能するような工夫が必要であることが明らかとなった。
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