悪性悪性黒色腫に対する免疫反応において重要なのは抗腫瘍活性を有する血球細胞が腫瘍へと浸潤することである。beta7インテグリンはインテグリンファミリーに属する細胞接着因子であり、alphaEインテグリンもしくはalpha4インテグリンとヘテロダイマーを形成する。beta7インテグリンはリンパ球などの血球細胞の移動を導くことが知られているが、この血球細胞の移動を通じて抗腫瘍免疫に影響を及ぼすのではないかと考え検討を行った。野生型マウス、beta7インテグリン欠損マウス、およびalphaEインテグリン欠損マウスにB16悪性黒色腫細胞を耳に接種した後の腫瘍の出現頻度、大きさの変化を計測したところ、beta7インテグリン欠損マウスのみにおいては腫瘍の成長が有意に遅延した。次に、腫瘍病変への炎症細胞浸潤をHE染色および免疫組織学染色により検討したところ、beta7インテグリン欠損マウスにおいては腫瘍部へのCD4陽性T細胞の数が増加していた。更に、腫瘍細胞の増殖を抑制もしくは促進させると考えられるサイトカインや細胞成長分子の発現をReal-Time PCRにて検討したところbeta7インテグリン欠損マウスにおいては、インターフェロンガンマの発現が亢進していた。一方、野生型マウスおよびbeta7インテグリン欠損マウスにB16悪性黒色腫細胞を静脈注射した後、肺における転移巣を検討したが、両者の間に差は見られなかった。以上より、beta7インテグリン欠損マウスにおいては血球細胞自体の抗腫瘍効果は野生型マウスと同等であるが、皮膚での病変に関しては、何らかの要因でインターフェロンガンマを発現するCD4陽性T細胞の浸潤数が増加することにより、抗腫瘍効果が野生型マウスより亢進することが判明した。
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