研究概要 |
a mammalian target of Rapamycin (mTOR)には細胞の分化や増殖など、種々の作用があり、最近は腫瘍形成のみならず、神経系に対する作用にも注目が集まっている。一方、mTOR系の異常の結果、中枢神経障害と全身の腫瘍発生、皮膚の色素異常を引き起こす、神経皮膚症候群と呼ばれる一連の疾患群がある。そこで、神経皮膚症候群の一つである結節性硬化症(TSC)や神経線維腫症(NF1)、伊藤白斑などにおける、mTORあるいは種々の既知、新規のmTOR関連物質の作用を検討することにより、mTOR系の神経病変と腫瘍形成との共通のキーファクターを確定し、その機構の解明目指した。我々は既にTSCなどの患者由来繊維芽細胞や表皮細胞におけるmTOR関連物質の変化を調べてきた。今回は、神経系の細胞においても同様の変化が認められるか否かの検討を試みた。ところで、皮膚の色素細胞は、発生学的には神経細胞と同様に神経堤より発生し、神経細胞と類似の性質を備えている。一方、前述の神経皮膚症候群ではTSCの葉状白斑や、NF1のカフェオレ斑など、しばしば皮膚の色素異常を伴う。そこで、神経細胞のモデルとして皮膚の色素細胞を用いて研究を進めた。まず、患者由来色素細胞の培養方法は確立していないので、患者由来色素細胞の培養方法の確立を目指した。ヒト正状メラノサイトにmTOR阻害剤を作用させての検討と同時に、ヒト正常メラノサイトにTSC1, TSC2のsiRNAを導入し、TSC1, TSC2のモデル色素細胞を作製し、これを用いて、今まで繊維芽細胞や表皮細胞で調べてきたのと同様に、mTORC1, mTORC2, FKBP12, 38BCL2, MITF, caspase3, Rhoなどの変化を検証した。その結果メラノサイトにおいも、mTOR、BCL2の変動が確認されたと同時に、MITFの変化も確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、TSC, NF1などの、神経皮膚症候群の患者由来繊維芽細胞や表皮細胞だけでなく、色素細胞に関しても、p40、mTOR, BCL2、FKBP12、FKBP38, caspase類,アポトーシスやオートファジーの変化を見ていく。 同時に、siRNA,を用いて、TSC1, TSC2, p40などをノックダウンした神経皮膚症候群のモデル細胞(繊維芽細胞、表皮細胞および色素細胞)を用いて同様の変化を検証する。
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