研究概要 |
mammalian target of Rapamycin (mTOR)には細胞の分化や増殖など、種々の作用があり、腫瘍形成のみならず、神経系に対する作用にも注目が集まっている。一方、mTOR系の異常の結果、中枢神経障害と全身の腫瘍発生を引き起こす一連の疾患群、神経皮膚症候群、がある。 そこで、mTOR系の異常の結果、中枢神経障害と全身の腫瘍発生を引き起こす結節性硬化症(TSC)をモデルとして、既知、新規のmTOR関連物質の作用を検討することにより、mTOR系の神経病変と腫瘍形成における共通のキーファクターの解明を試みた。まず、TSCで特異的に減少し、TSCの神経症状と関連があり、さらにアポトーシスの誘導に関与することが知られているp40に注目し、p40とmTOR, あるいはtyberin, hamartinとの関係の解明を試みた。 HeLa 細胞をp40のSiRNAを用いてノックダウンしたところ、細胞の増殖能が低下し、同時に細胞の移動能が促進していた。さらに、P40をノックダウンしたHeLa細胞では,tuberin, p-Tuberin(939,) p-Tuberin(1462), hamartin, RhoBのmRNAレベルは低下しており、RhoA, mTORとcaspase3 のmRNAレベルは増加していた。一方、p-tuberin(1254), caspase8 のmRNAレベルの変化は認められなかった。HamartinをノックダウンしたHeLa cellでもRhoBの発現が増加しており、これらの変化はTSC1, TSC2ノックダウン細胞と類似の変化と考えられた。以上より、P40もtuberin hamartinと同様にmTOR系に関与する新規関連物質の一つであり、神経病変と腫瘍形成における共通のキーファクターの可能性が示唆された。
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