日本人乾癬患者集団(N=200名)を用いて、これまでに乾癬発症に寄与しうる候補遺伝子群の存在を明らかにしてきた。 1)そこで本研究では、ヒト主要組織適合抗原系であるHLAクラスIおよびクラスII遺伝子の多型性を基礎として、HLAと相互作用する関連遺伝子群を探索する過程で、T細胞を制御する補助分子であるCTLA4(CD152)のSNP解析を行い、CTLA4(49A/G SNP(rs231775)変異が、HLA-DRB1・08と相関することを明らかにした。CTLA4-Igの複合体が、海外では、乾癬治療に応用されており、ゲノム解析の面から、同薬剤の有効性の程度を事前に予測する指標として利用できる可能性を示唆するものである。その研究成果は、J.Dermatologiclal Science (2011年)に発表予定である。 2)次に、乾癬を脂質代謝面から研究する目的で、脂肪酸を輸送する脂肪酸結合蛋白(FABP5)に注目し、既に作製していたFABP5ノックアウトマウス由来ケラチノサイトを用いたin vitroでの解析から、転写に重要なNF-κBの制御に必須脂肪酸であるリノール酸の代謝産物である13-HODE (hydroxyoctadecadienoic acid)の存在が極めて重要であることを発見した。 この研究成果は、J.Investigative Dermatology(2011年)に報告した。 3)乾癬の発症は、単にCD4陽性T細胞の一つであるTh17細胞説では十分な説明をなすことができず、代謝面の異常についての解析も重要であることを一連の研究から明らかにすることができた。今後、乾癬の治療改善に役立つ情報源となりうる。
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