研究課題/領域番号 |
22591223
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
武藤 正彦 山口大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40175625)
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研究分担者 |
一宮 誠 山口大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (20314809)
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キーワード | 乾癬 / 発症候補遺伝子 / 高次構造 / アディポネクチン / HLA-C |
研究概要 |
炎症性疾患である乾癬の発症に寄与する遺伝的制御機構を解明することを目的として研究を続け、以下の研究成果を達成した。 (1)乾癬発症の主要な候補遺伝子領域とされるHLA-C領域内に、疾患感受性遺伝子とされるHLA-Cw^*06に加え、疾患抵抗性と相関を示すHLA-Cw^*14(p<0.004)遺伝子の存在を日本人乾癬患者集団(N=200)で明らかにした(投稿予定)。 (2)アディポネクチン(ADIPO)遺伝子rs1501299(+276:G→T)のSNP多型解析結果を基にして、(1)で示したHLA-Cw^*06との関連性を調べたところ、アディポネクチン高分泌型を示すTT遺伝子型はHLA-Cw^*06陽性を示す乾癬患者20名中ゼロであった。この事実(HLA-Cw^*06陽性患者では血中アディポネクチンレベルは高くない事実)は、アディポネクチンの血中レベルは、乾癬の重症度を示すPASIスコア及び血中TNF-αレベルと反比例することを考えると、HLA-Cw^*06陽性の乾癬患者は重症化し易いということができ、その根拠の一つは低分泌型アディポネクチンであるGアリルを有するためであることが示唆された。さらに、17名のHLA-Cw^*14陽性乾癬患者群でもADIPOrs1501299TT遺伝子型陽性者は同様に全くみられなかったことから、HLA-Cw^*14はADIPOrs1501299Gアリルとハプロタイプを形成することでリスクハフロタイプを構成することに帰着するといえる。直接的及び間接的に多面効果を発揮するHLA-C分子の効果の一端をここに初めて明らかにすることができた。 この研究成果は、アディポネクチンが乾癬炎症の主軸を成すTNF-α→NF-κBの制御因子であることから、抗TNF-α抗体乾癬治療薬の効果判定の予測マーカーとしてアディポネクチンSNP多型が機能する可能性が大きい。 (3)以上の代謝面からの乾癬研究に加え、表皮での抗原提示に重要なランゲルハンス細胞と紫外線との関わりをタイトジャンクションの観点から検討し、UVBが照射量依存性にタイトジャンクションを破壊することを見い出し報告した(J. lnvest.Dematol.,131:744-752,2011)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乾癬発症に際し、主要効果遺伝子と推定されるHLA-C(特にHLA-Cw^*06)遺伝子の多様な機能を解明すべく、先ずその相互作用する相手遺伝子群の構造解析を行い、今迄にHCR遺伝子、CTLA-4遺伝子、そして今回のアディポネクチン遺伝子の存在を明らかにしてきた。特に、HCR遺伝子については、ヒトケラチノサイトを用いたルシフェラーゼ活性を利用して、野生型と変異型の機能解析を現在進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
乾癬発症に関る巧妙な発症候補遺伝子群のネットワーク構造をHLAを軸にして解析を続け、乾癬は免疫系と代謝系が連動した炎症性疾患であることをゲノム解析から明らかにすることで乾癬発症の遺伝的制御が可能となる。
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