研究概要 |
ヒストンおよび転写因子を脱アセチル化するSIRT1は神経細胞の移動に関与する。同じ神経内分泌系細胞に属するメラノサイトとメラノーマ細胞においてもSIRT1が細胞質に発現し,SIRT1阻害薬は,メラノーマ細胞の移動と移植メラノーマの浸潤と転移を抑制すること見出した。本研究は,この新たな知見を基盤として,SIRT1の発現とメラノーマ細胞の移動と浸潤に対する効果を検討し,SIRT1阻害によるメラノーマの転移抑制の分子機構を明らかにし,メラノーマの転移を抑制する抗腫瘍薬としてのSIRT1阻害薬の評価を行う。B16F10細胞の移動には低分子量GTP結合タンパク質Rac1の活性化(GTP結合Rac1)が必要である。SIRT1のシグナル伝達経路の下流に活性化型Rac1が位置するかどうかを,SIRT1阻害薬やSIRT1-siRNAを用いて検討した。B16F1細胞やB16F10細胞の免疫染色の予備的検討ではSIRT1は細胞移動方向の突起部分の細胞膜直下でF-actinと共存していた。レンチウイルスベクターによりSIRT1-siRNAを恒常的に発現するB16F1細胞を作成した。in vitroでは,scratch assayとmatrigel migration assayを行い,コントロールB16F1細片に比べ細胞移動が少ないことを確認した。in vivoマウスモデル実験では,C57BL6マウスに移植したB16F1メラノーマ細胞は,SIRT1の発現が少ない場合転移しにくい。現在,高肺転移メラノーマ細胞株を作製中である。
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