円形脱毛症は、(1)緩やかな家族内発症を示すこと、(2)一卵性双生児の研究では一人が発症するともう一人が発症するリスクが50%になること、(3)ステロイド等の免疫抑制剤や紫外線療法が有効であることより、自己免疫性疾患(遺伝と環境により発症する)と考えられている。以前より相関解析が行われており、HLA-DQB1*03、HLA class I分子、HLA-DQA1、DQB1、MICA、IL-1 receptor antagonist、MIF、Notch4が候補遺伝子として報告されている。 また患者家系を用いたゲノムワイドな連鎖解析ではch6p(HLA遺伝子座)、ch6q、ch10、ch16、ch18に連鎖が認められ、AAモデルマウス(C3H/HeJ)の連鎖解析では、マウスch8、ch9、ch15、ch17に連鎖が報告されている。しかしこれら解析ではP値は低いものの、相対危険度(OD比)は未だ2を超える報告は少ない。そこで本症の疾患感受性遺伝子を同定する目的で、まず候補領域と候補遺伝子の同定を試みた。すなわち、100例のpoolされた患者DNAを用いて多型DNAマーカーを増幅し、その対立遺伝子と疾患の相関を統計学的に調べた。方法としては、まず100例の患者DNAサンプルを用いて3000を超えるマイクロサテライトリピート遺伝子多型マーカーを用いてスクリーニングを行い、ゲノム全長に大まかな候補領域を得た。更に異なる200例を2セットに分け、2次・3次スクリーニングを行い、候補領域を限定した。その結果、第6番染色体短腕HLA領域HLA-Bのセントロメア側近傍に強い相関が同定された(OR:3.21)(データ未発表、秘密厳守願います)。 現在、HLA-B近傍の塩基配列とSNPを決定し、SNPによる相関解析と、候補遺伝子同定を行っている。
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