研究概要 |
今回我々は染毛剤であるp-Phenylenediamine; PPDによる接触皮膚炎患者について、頭皮に炎症を起こした群とその他の部位(主に手)に炎症を起こした群に分けて、(1)炎症沈静後に採取した毛根サンプル、(2)炎症沈静後に採血・分離した末梢血単核球におけるPPD添加に対する遺伝子発現変化の解析を行った。 方法:1)毛根サンプルから抽出したtotalRNAを用いて、オリゴヌクレオチドマイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現変化を、健常コントロール群に加えて同じ炎症性疾患であるアトピー性皮膚炎患者、および尋常性乾癬患者を対照として解析した。またその結果を一部定量的PCRにて検証した。 2)分離した末梢血単核球に対してPPDを加えた場合と加えなかった場合における24時間後の遺伝子発現変化について、オリゴヌクレオチドマイクロアレイを用いて解析した。またその結果を定量的PCRにて検証した。 結果:1)マイクロアレイ解析では健常コントロール群、アトピー性皮膚炎群、尋常性乾癬群と比較してPPD接触皮膚炎群(特に頭皮に炎症のある群)ではTh1細胞遊走性ケモカインであるCXCL9,10,11や接触因子のVCAMなどの遺伝子発現が増強しており(エクセルファイルー学会用GCシグナルデータ参照)、そのうちCXCL10の遺伝子発現増強をリアルタイムPCRで定量的に確認した。2)健常コントロール群と比較してPPD接触皮膚炎群では、PPDの添加がない状態でも、マイクロアレイ解析ではCD80,CD86,DC-SIGN等の抑制性T細胞誘導因子が低下していた(エクセルファイル-PBMC PPD arraydata参照)。またその結果をリアルタイムPCRで定量的に確認したエクセルファイル-122410realtimePCR参照)。考察:毛根組織においては炎症沈静後しばらく経過してもTh1型の炎症が存在していることが判明し、これまでに報告されている接触皮膚炎の系統と良く合致しており、病態は空くに対する毛根組織の有用性が示唆された。末梢血単核球についてはCD80,CD86,DC-SIGN等の抑制性T細胞誘導因子が低下していたがこれらはPPDの添加の有無にかかわらず認められるものであった。従って炎症の結果というよりは、抑制性T細胞誘導因子の低下自体が接触皮膚炎の発症に関与する可能性が示唆されたが、病態の解明には更なる検討が必要である。
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