研究概要 |
全身諸臓器に線維化・石灰化をきたす腎性全身性線維症(nephrogenic systemic fibrosis : NSF)は、ガドリニウム造影剤を透析患者に投与することにより生じることが知られている。我々はこれまでにヒト皮下脂肪組織由来間葉系幹細胞、ヒト皮膚真皮由来線維芽細胞を用いた検討を行い、ガドリニウムによる線維化病変および石灰化病変形成機序を明らかにした(Okada E, Yamanaka M, Ishikawa O.New insights into the mechanism of abnormal calcification in nephrogenic systemic fibrosis-gadolinium promotes calcium deposition of mesenchymal stem cells and dermal fibroblasts.J Dermatol Sci.2011;62(1):58-63)。本研究の目的は、これまでにin vitroで得た知見を元に、ガドリニウムを用いた線維化疾患モデルマウス、石灰化疾患モデルマウスを作製し、その発症メカニズムを詳細に検討することである。Sieberらは既にラットを用いたNSFモデルを完成させているが、本研究では取り扱いやすさ、将来的な研究の発展性を考えて、マウスを用いることにした。ガドリニウムの投与方法については、皮下注射、静脈注射、腹腔内注射の3種類の方法を考えたが、我々は先に報告した実験結果から、NSFにおける皮膚石灰化は、ガドリニウムがヒト皮下脂肪組織由来間葉系幹細胞に直接作用することにより生じる可能性が高いと推測し、はじめに皮下注射によりガドリニウムを投与することとした。10μM~10mMの濃度のGdCl_3を剃毛したC3Hマウスの背部に週3回、最長4週間まで皮下注射を行い、皮膚サンプルを回収した。今後、回収したサンプルの組織学的、生化学的、分子生物学的検討を行う予定である。
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