本年度は、好塩基球からのヒスタミン遊離活性を持つ精製汗抗原物質の同定を行う目的で、以下の通り研究を実施した。 1.ヒト皮膚由来cDNAライブラリーの作製と発現スクリーニング ヒト皮膚由来cDNAライブラリーを、動物細胞用ベクターで構築した。作製したcDNAライブラリーを分割し、cDNAクローン1000個分を1プールとしてまとめてプラスミド精製を行った。精製したプラスミドをCOS7細胞に一過性に発現させ、培養上清および細胞を回収し、培養上清、細胞破砕物と抗汗抗体を用いてスクリーニングを行った。1次スクリーニングの陽性プールを2次、3次、4次スクリーニングと絞り込んで行き、最終的に得たシングルクローンの遺伝子配列をDNAシークエンサーにて解析した。得られた物質のヒスタミン遊離活性を検討したが、本年度の研究期間内にはヒスタミン遊離活性のある物質の同定には至らなかった。 2.新規抗汗抗体の作製 上記の発現スクリーニングに平行して、カラムワークを組み合わせて汗の精製を行い、この精製汗抗原を用いて新規の抗汗抗体を作製した。汗抗原と汗に反応する好塩基球を使用したヒスタミン遊離活性試験、さらに免疫ブロット法およびELISA法を用いて解析を行った結果、今回得られた新規汗抗体と、以前に我々が得た抗汗抗体とは異なる抗原部位を認識していることを確認した。現在、これらの新規抗汗抗体を大量に精製し、免疫染色による皮膚組織における汗抗原の発現様式の検討と、新規抗汗抗体を用いた発現スクリーニングによる検討の準備中である。
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