昨年度に引き続き本年度も、好塩基球からのヒスタミン遊離活性を持つ精製汗抗原物質の同定を行う目的で、以下の研究を実施した。 1.ヒト皮膚由来cDNAライブラリーを用いた発現スクリーニング ヒト皮膚由来cDNAライブラリーを用いてヒスタミン遊離活性を持つ蛋白の発現クローニングを行ったが、目的の分子の同定に至らなかったので、もう一つの方策として挙げていたヒト汗をカラム精製して質量分析により分子同定を行う方法に切り替えた。 2.精製汗抗原の質量分析と解析 大量にプールしたヒト汗を濃縮し、アトピー性皮膚炎患者好塩基球のヒスタミン遊離活を指標に、陰イオン交換カラム、逆相カラム、ゲル濾過カラムを用いてヒスタミン遊離活性をもつ分画(QR)を絞り込み、質量分析を行って汗抗原として有望な蛋白質のペプチド断片を複数得た。現在、この蛋白質をリコンビナント蛋白として合成し、活性を確認中である。 3.患者血清を用いた汗アレルギーの簡易診断法の確立 2.で絞り込んだ分画(QR)を免疫原として作製したモノクローナル抗体を固相化したELISAplateにQRを結合させ、患者血清を反応後、抗ヒトIgE抗体で検出する系を確立した。アトピー性皮膚炎患者と健常人の血清間で有意差を得ており、汗アレルギーの簡易診断法として有用であることが示唆された。
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