研究課題/領域番号 |
22591241
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
藤山 幹子 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教 (60263935)
|
キーワード | 尋常性乾癬 / IL-22レセプター / IL-22 / STAT3 / Bcl-3 |
研究概要 |
IL22RのリガンドであるIL-22は、乾癬の病態形成に必須のサイトカインであり、表皮角化細胞の増殖、分化、感染防御、炎症に関わる遺伝子の発現を制御している。乾癬モデルの作成には、IL-22がどのようなシグナル経路で遺伝子発現を制御しているかについての理解が重要である。これまで、IL-22のシグナルにおいて、STAT3のリン酸化とその活性化が重要と報告されているが、実際にSTAT3が遺伝子の発現にどのように関与しているのかほとんど検討されていなかった。そこで、IL-22により種々発現する遺伝子発現とそのメカニズムについて検討した。 IL-22の刺激によりSTAT3のリン酸化は1時間以内の早期に認められる。IL-22により発現が誘導される遺伝子のうち、MCP-1やSOCS3は刺激後1時間で遺伝子の発現が誘導され、またSTAT3シグナルの抑制により発現が抑制されることよう、STAT3依存性に直接誘導される遺伝子と考えられた。一方、HB-EGF、IL-8、S100A7、HBD2のmRNAは、IL-22刺激により遅発性に発現が誘導され、STAT3のシグナル抑制により発現が抑制されることより、STAT3により誘導される2番目の因子の関与が示唆された。そこで、Bcl-3に注目して検討を行ったところ、IL-22の刺激によりSTAT3を介したBcl-3の核内発現の増強がみられることを確認した。siRNAによりBcl-3の発現を抑制した表皮角化細胞では、IL-22によるHB-EGF、IL-8、S100A7、HBD2の遺伝子発現が抑制された。さらに、Bcl-3を表皮角化細胞に強発現させると、HB-EGF、IL-8、S100A7、HBD2の遺伝子発現が誘導された。以上の結果は、乾癬の病態におけるBcl-3の重要性を初めて明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
三次元皮膚にレンチウイルスを導入し目的のレセプターを強発現した系の作成を試みているが、レンチウイルスの導入の影響により表皮の重層化に異常を生じやすく、実験の進展が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
真皮成分を用いない三次元表皮の作成を試みている。この手技が確立されれば、レンチウイルスベクターを導入し、再度強発現系の三次元皮膚を作成する予定である。 また、三次元皮膚および通常の培養表皮角化細胞を用いて、乾癬におけるIL-22Rの役割を、細胞内シグナルに重点をおいてさらなる検討を行う。三次元皮膚は正常皮膚と同程度にIL-22Rが発現しており、検討可能である。また、通常の培養表皮角化細胞においては、アデノウイルスベクターを用いてIL-22Rを発現させた実験系を確立している。
|