研究概要 |
昨年度までの研究で、乾癬モデルマウス(K5.Stat3C)と関節炎自然発症マウス(gp130^<F759/F759>)を交配して得られたK5.Stat3C:gp130^<F759/F759>ダブルトランスジェニックマウスでは、その75%に生後2-3週間で後肢の趾に乾癬様皮疹を伴う趾炎が出現し、腫脹の高度なものでは生後6週で爪甲の変形が出現すること、腫脹した足趾において病理組織学的に中節骨や末節骨の腱付着部の付着部炎の所見および爪甲の異常角化を認め、ヒトの関節症性乾癬における付着部炎および爪甲病変に酷似していることを確認した。また、K5.Stat3C:gp130^<F759/F759>マウスの腫脹した足趾爪甲と周囲の皮膚から抽出したmRNAを用いたreal-time RTPCR法により、他のgenotypeのマウスと比較してIL-1b,TNFa,IFNg,およびTh17関連サイトカインであるIL-23,IL-17a,IL-22,IL12bの発現が増加していることを確認した。本年度は趾炎の組織を用いて、上記サイトカインの発現を免疫染色にて確認したところ、末節骨周囲の腱付着部にTNFα陽性細胞、IL6陽性細胞が多数浸潤しており、IL17A陽性CD4T細胞も多数認めた。また、腫脹足趾の組織において、Stat3の発現を免疫染色にて検討したところ、乾癬様皮疹を呈する表皮角化細胞の核のみでなく、末梢骨周囲の結合織にもStat3陽性細胞を認めた。Th17細胞が発現するケモカインレセプターCCR6のリガンドであるCCL20の免疫染色にて、趾炎末節骨周囲にCCL20陽性細胞を多数認めた。治療実験として、足趾の腫脹したマウスに抗TNFα抗体の腹腔内投与を行った。1回投与では明らかな腫脹の改善は得られなかった。現在抗p40抗体投与を施行中である。
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