研究概要 |
全身性強皮症のモデルであるタイトスキンマウス(TSK/+)にヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるトリコスタチンAを皮下注射にて投与したところ、投与群が有意に皮膚硬化の抑制を認めることができた。 TSA群と非投与群マウスの皮膚を回収し、線維芽細胞から産生される細胞外マトリクスであるコラーゲン、線維化に関与するサイトカインであるIL-4,IL-6,IL-13などのmRNA測定をおこなった。さらに細胞成長因子としてfibroblast growth factor (FGF), transforming growthfactor-β (TGF-β)などのmRNA測定をおこなった。その結果、コラーゲンmRNAはTSK/+マウスでTSA投与前はwild type mouseと比較して有意に高値を示していたが、TSA投与後は有意に低下していた。また、FGFもTSIK/+マウスではTSA投与前はコントロールと比較して非常に高い値を示していたが、投与後は低下し、コントロールとの有意差はなくなった。他のサイトカインや成長因子であるTGF-β,IL-4,IL-6もTSA投与前はTSK/+マウスで有意に高値を示していたが、投与後は低下し、コントロールマウスとの差はなくなった。さらに、TSA投与前後でのマウス血清を用いて、抗トポイソメラーゼI抗体、IL-4、IL-6の比較を行った。その結果、TSA投与前後でのこれら抗体、サイトカインの発現量に変化は認められなかった。以上のことより、TSAが皮膚硬化に与える影響は全身的なものではなく、局所における反応であると考えられたため、TSK/+マウス、コントロールマウスより皮膚線維芽細胞を培養し、TSA刺激の有無により,コラーゲンmRNA、各種サイトカイン、成長因子mRNAの発現を比較した。TSA刺激前は、TSK/+マウス由来線維芽細胞はコラーゲンmRNA、IL-6mRNAが有意に高値を示していたが、TSA添加によりその発現は低下し、有意差は消失した。以上の結果より、TSAは皮膚線維芽細胞に作用し、TSK/+マウスの皮膚硬化を抑制していることが推察された。
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